2010年に発行されたCSRの国際規格ISO26000において、社会的責任の目的は「持続可能な発展に貢献すること」と定義されました。環境、水、食糧、貧困…社会が抱える課題は多岐にわたりますが、中でも「資源の有効利用」は、金属資源を利用することで成り立っている当社の事業にとって、最も身近な領域であり、重要な社会課題です。
天然資源である鉱石は、消費し続ければいずれは枯渇します。リサイクルは重要な解決策の一つですが、金属を効率的に回収する技術、その過程で発生する有害物や非有用物を安全に処理するための技術とインフラも必要です。同時に、効率的にリサイクル原料を集荷する社会システムの構築、多種多様な原料を処理する手間やコストなど、リサイクルにも解決すべき技術的・経済的・社会的な課題が含まれています。
DOWAグループは、これらの課題を理解し、取り組むべき領域に対して技術・製品・サービスなどの事業活動を通じて貢献しつつ、さまざまな取り組みを通じて自社の成長を図ります。
持続可能な経済成長のためには、天然資源の制約の上に成り立つこれまでの経済システムを離れ、資源循環の効率化と価値創造を最大化する新しい成長モデルが求められています。
DOWAグループでは、単一のリサイクルを断片的なチェーンで行うのではなく、貴金属、家電、自動車、使用済み小型家電など幅広いリサイクルを組み合わせ、さらに廃棄物処理や研究、分析など各部門との連携により、他にはない資源循環の輪を構築しています。当社の営業、物流部門は回収コストの低減や安定回収を図り、研究部門は将来を見据えたリサイクル技術の開発を進め、コンサルティング部門は各国の政策や規制動向の調査を行うなど、グループの専門性と総合力を活かしてリサイクルの高度化を推進しています。また、必要に応じて国内外の社外パートナー、異なるセクターとも連携し、フレキシビリティを高めながら柔軟なリサイクルチェーンの構築に努めています。
多種多様なリサイクル原料は、有用金属が含まれる一方でさまざまな有害性も持っています。このため、多くの資源をただ回収すればよいのではなく、「どのようなリサイクルを行うか」が重要です。経済的価値を創出しながら、同時に労働者の安全を守り、環境に負荷をかけないリサイクルでなくてはなりません。
このリサイクルと環境保全の両立に、DOWAグループの廃棄物処理事業が持つ技術とインフラが、ほかにはない強みとなっています。砒素やカドミウム、鉛などの適正処理技術、ダイオキシンが発生しない焼却工程、GPSや漏水感知システムで管理された最終処理施設など、鉱山・製錬事業で培った技術をベースに責任あるリサイクルを実現しています。
バリューチェーンのグローバル化が進む中、各国間で資源効率の最大化を図ることも必要です。DOWAグループは、日本で確立したリサイクル技術や経験、知識、人材などのリソースを活かし、中国をはじめシンガポール、タイ、インドネシアにおいて、金属リサイクルや家電リサイクル、廃棄物処理事業を展開しています。
また、米国やチェコの工場では高品質なリサイクル原料の海外集荷を行い、グローバルな資源循環システムの構築を進めています。適切なリサイクルが可能な場合は現地で、技術やインフラ面で日本での再生が効率的で安全な場合は国内でリサイクルするよう、各国法制度との整合性や透明性を確保しながら全体最適を目指しています。