アジアの中心に位置し、インフラの整備が進むタイは、グローバル経済におけるサプライチェーンの中で欠かすことのできない存在です。DOWAグループは、2006年の事業進出から、環境・リサイクル、製錬、金属加工、熱処理の4事業を展開し、現在は当社主力の海外拠点となっています。DOWAグループのタイにおける事業活動と、それぞれの事業所におけるCSRの取り組みを紹介します。
DOWAグループのタイにおける事業展開は、伸銅品・めっき加工を行うDOWA Metaltech Thailand(DMTT)の設立から始まりました。
DMTT 社はチャチェンサオ県、ゲートウェイ・シティ工業団地に位置し、主に自動車部品の日系メーカーに向けて、条と呼ばれるコイル形状の銅・銅合金の加工、銀・ニッケル・スズめっきを提供しています。グループの国内工場と同等の最新設備を有し、日本の品質水準で量産することで、タイにおける現地調達化を進める日系企業のニーズに対応しています。
DMTT社は、DOWAグループのネットワークを活用し、工程から排出する金属スクラップのリサイクルフローを構築しています。自社だけでなく、顧客サービスとして、販売した銅・黄銅品のスクラップも買い取り再資源化を進めています。めっきに使用される貴金属は、シンガポールや小坂製錬(秋田)で回収しており、銅はDOWAメタル(静岡)において、再原料化しています。このような国際的な資源循環を確実に実施するため、毎年タイ政府へ処理工程のトレーサビリティを明確にした詳細な行政報告を行い、適正に管理された循環システムのもと、責任あるリサイクルを推進しています。
DOWA Thermotech Thailand(DTT)は、DOWAサーモテックの東南アジア第1 号拠点として、バンコクより約150kmのラヨーン県、自動車産業が集中するイースタンシーボード工業団地に立地しています。タイにはこれまで100基以上のDOWAサーモテックの設備が納入されており、DTT社はその修理やメンテナンス、改造工事サービスからスタートしました。現在では、主に自動車関連部品や農業用機械部品を中心とした熱処理の受託加工サービスならびにDOWA 製熱処理設備のメンテナンスサービスを中心に展開しています。
DTT社では、技術教育の一環として日本と同じような熱処理技能士の試験を実施したり、近隣の高校よりインターンシップを受け入れるなど、現地の人材育成に力を入れています。2011 年より、安全に関するCCCF活動(Completely Check and Completely Find-Out)を開始、2014年にはQC 活動(Quality Control)も始めました。
CCCF 活動では、活動に関する従業員教育のほか、全従業員が参加する年2回の「現地現物活動」を通じて、職場におけるあらゆる危険箇所の洗い出しを行っています。また、安全掲示板の設置により、情報の見える化と従業員のコミュニケーションを図っています。
Bangpoo Environmental Complex(BPEC)はバンコク近郊のサムットプラカーン県にある廃棄物の焼却・リサイクル工場で、タイに2ヶ所しかない大型廃棄物焼却処理施設の1つです。
2006年に操業を開始し、2009年にDOWAグループに仲間入りしました。BPEC社では、近隣工場のオフィスや食堂などから排出される非有害廃棄物や、シャンプー、タバコなどの製品系廃棄物の焼却処理を行っています。
タイの焼却施設の中でも特に高い稼働率を維持し、安定した処理を行っています。
タイでは、経済成長に伴う廃棄物の発生量増加に対する回収・処理能力不足が社会課題の一つとなっています。コストの問題から焼却を行わずそのまま埋め立ててしまう処理が主流のため、臭気などの衛生面の問題や、野焼きや不法投棄などの不適切な処理も存在しています。
BPEC社は、2005年に日本の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援による廃棄物有効利用プロジェクトとして建設された流動床式焼却炉を有し、最高950℃で確実な焼却処理を行っています。また、焼却と同時にボイラーから回収した蒸気を、近隣の工場に熱源として供給し、残りの蒸気を発電に使用しています。発電した電力は自家消費するほか、余剰電力を電力会社へ販売するなど、環境に負荷を掛けない安全な廃棄物処理とエネルギー供給を両立しています。
Eastern Seaboard Environmental Complex(ESBEC)は、チョンブリー県シラチャ市に位置し、廃油・廃液処理、廃棄物の最終処分と、廃油・スラッジ類の再資源化や廃電気・電子製品からの金属スクラップ・プラスチックの分別回収などのリサイクル事業を行っています。ESBEC社の最終処理施設は米国EPA(環境省)の建設基準にも適合する最終処分場で、高密度ポリエチレンシートなどでカバリングする悪臭対策、生ゴミなどから発生するメタンガス類の焼却処理、浸出水の物理化学処理・生物処理など、万全の環境対策を行っています。
ESBEC社では、地元タイの発展に貢献するため、地域との融合や、未来を担う子どもたちの教育に視点をおいた活動を積極的に行っています。特に次世代育成として、地域の小中学校6校への奨学金、教員育成基金への財政支援を行っているほか、環境教育の一環として学生を対象とした事業所の見学学習や学校の衛生環境向上のための清掃・消毒のボランティア、リサイクル推進のための分別ごみ箱の寄付など、本業と関連の深い貢献活動を継続して実施しています。
DOWA Metals & Mining(Thailand) Co.,Ltd.(DMMT)は、バンコクから東南へ120キロのラヨーン県、アマタシティ工業団地に位置する亜鉛加工工場です。自動車関連産業向けを中心に、溶融亜鉛めっき用調合亜鉛、ダイカスト用亜鉛合金、溶射用亜鉛線など高品質な亜鉛加工品の現地生産を行い、日本に次ぐ亜鉛事業の第2の拠点として日系顧客の海外進出や現地調達ニーズに対応しています。
DMMT社は、立地するアマタシティ工業団地においてCSRボランティアを行う協会に参加しています。2014 年現在、日系企業を中心に10社が参加し、地域の代表者と企業側で、地域のためになるアイデアを話し合いながら取り組みを進めています。この活動は地域住民とのコミュニケーションを目的としており、近隣の学校の暑さ対策や学校の食堂の換気対策などを協力しながら実施してきました。2015年度は、ボランティア参加工場の工程から出る廃棄物を活用した、住民参加型のモノづくりコンテストを検討しており、さらに活動の充実を図るため、一緒に取り組む住民に参加の呼び掛けなどを行っています。