DOWAグループのCSR報告書の第三者意見を担当するのは今年で4年目となります。今年新たに設定したCSRの中期計画では、各重点施策に紐づく形で指標と数値目標を設けたことで、「2020年のあるべき姿」に向けた進捗状況が明確に分かるようになりました。重点施策の内容に関しては、グローバルな人権の観点が加われば、事業と関連した重要課題はほぼ網羅できるのではないかと考えます。
また、サプライチェーン・マネジメントにおいては「CSR調達方針」を見直し、従来のQCDにS(サステナビリティ)の要素を加えており、今後、主要顧客に対するCSR調達ガイドラインとセルフチェックリストの配布を開始すると報告されています。来年の報告ではその内容と実施結果を示し、開示レベルをさらに高めていけると良いのではないかと思います。
DOWAグループは既にグループ全従業員の35%が海外勤務であり、多様なグローバル人材の育成を目指し、若手社員の海外研修やグローバル採用枠の拡大や在外各社スタッフの来日教育に力を入れていると報告されています。文化・食生活・宗教の違いへの配慮など、人材のダイバーシティを推し進める上でCSRの観点は欠かせません。また、ミャンマーなど人権リスクの高い国での事業展開を想定すると、現地での人権課題の把握とオペレーションへの組み込みといった人権デューディリジェンスの取り組みも求められます。ダイバーシティへの配慮を含むグローバルな人権課題への取り組みにさらに力を入れていくことが望まれます。
昨今、世界的にも優良企業と目されていた企業において相次いで不祥事が見つかり、コーポレート・ガバナンスのあり方が根底から問われ、企業に対する社会の視線は極めて厳しくなっています。新中期計画で示すように、海外展開および新たな成長分野への進出による継続的な成長はDOWAグループにとって重要なテーマですが、それと同時に盤石なガバナンス体制を整え、不正を絶対に許さない企業風土の醸成が極めて大切です。現在は別個に設けられている経営の新中期計画の中にCSR方針を統合させる形で一体化させるのが理想的な姿です。事業戦略の中でCSRをどのように追求していくのかをストーリーを持って示すことができれば、堅実に企業価値の向上を図る姿勢がステークホルダーに理解されるのではないかと思います。
DOWAグループの最大の強みは、高い技術力を基にバリューチェーンの最上流から最下流まで一貫したサービスを提供できる事業形態にあると考えています。鉱物資源の埋蔵量には限りがあることを考えると循環型経済(Circular Economy)の構築は必須です。DOWAグループの強みを活かし、一企業の枠を超え、リーダー企業としてあるべき社会モデルを示しつつ産業界を牽引していっていただきたいと期待しています。
株式会社イースクエア
代表取締役社長
本木 啓生
(もとき ひろお)