私たちDOWAグループは、環境対応製品の提供や廃棄物処理・リサイクルなどの本業を通じて、世界各地における環境・エネルギー問題などの社会課題の解決に寄与してまいります。
DOWAホールディングス株式会社
代表取締役社長
当社は、明治政府から小坂鉱山の払い下げを受けた1884年(明治17年)を創業の年と位置付けています。当時、鉱山会社は、水道を引き、発電所を建設し、鉄道や道路を整備するといった事業活動に直結する社会資本を提供するにとどまらず、住居や病院をはじめ、芝居小屋などの娯楽施設のほか、地域のよりどころとなる山神社を造営するなど、住民が必要とするまちづくりを担いました。
一方で、鉱山開発や製錬事業は、無造作に進めれば必ず森林伐採などの自然破壊や大気や水質などへの環境汚染を引き起こします。我々DOWAグループは、環境への影響を低減する技術や管理ノウハウを築き、その保全に取り組んでまいりましたが、それだけでは130年余りに渡り地域に根ざした企業活動を継続することはできなかったはずです。住民の方々と話し合い、情報公開に努めるなど、信頼を重ねることがいつの時代でも重要でした。
鉱山が地域の発展に貢献し、同時に地域社会の課題解決に努めることは言うまでもなく、このような成り立ちこそ当社のCSR活動の原点であろうと考えています。
近年、CSRが盛んに叫ばれるようになりましたが、CSRは、ブームでも、新しく生まれたものでもなく、当社にとっては今も昔も経営そのものだといえるでしょう。
さて、昨年を振り返りますと、気候変動に関する国際的枠組みを定めたパリ協定が発効され、また、持続可能な世界を実現するための目標がMDGs(Millennium DevelopmentGoals)からSDGs(Sustainable Development Goals)に移行するなど、国際社会における共通課題の解決に向けた大きな動きがありました。これらの課題に対し企業が果たすべき役割は非常に大きいと言えます。
気候変動対策について、当社は自社のCO2排出量の抑制にとどまらず、省エネ効果を高める素材、部品の提供や、アジアでのフロンの破壊処理技術展開などを通じて責務を果たしてまいります。2016年は、導電性や強度などの特性を高めた銅合金や車載インバーターに使用する金属-セラミックス基板の開発、燃料電池向け電極材料の特性改善などを実現しました。また、アジア地域の低炭素化を目指し、タイ廃棄物処理子会社におけるフロン破壊の試験処理を実施し、適切なフロン回収・破壊に向け事業化を進めています。
当社は、SDGsにおいて、企業理念で謳う「資源循環社会の構築」と深く関わる『目標12.持続可能な消費と生産』が、本業を通じて最も貢献できる目標であると考えています。ほかのゴールにも密接に関連するゴール12を当社のSDGs推進の入口と位置付け、従業員一人ひとりの努力が持続可能な社会実現につながるということを示しつつ、引き続き注力してまいります。
また、パリ協定やSDGsといった新しい枠組みに対応しつつも、2009年に署名した「国連グローバル・コンパクト」の人権・労働・環境・腐敗防止に関わる4分野10原則を引き続き支持することを改めて表明いたします。そして、法令遵守は当然のこと、社会的倫理を守りながらコンプライアンスを徹底してまいります。
鉱山・製錬業を源とするDOWAグループは、環境や経済・社会など事業環境のさまざまな変化に対応するため、時には閉山という辛い決断をしながら、現在の5つのコア事業という形へ姿を変え成長してまいりました。その過程において新たなビジネスチャンスを掴む一方で、当社の強みが活かせない領域へ手を広げていくつかの失敗を経たことで「変化の仕方」を学びました。事業環境の変化を恐れずに機会と捉えて自らが積極的に変革することで、遷り変わりに翻弄されない強さを築くという企業文化が醸成されたと考えています。
昨年度は英国のEU離脱問題をはじめとする欧州の政治情勢や米国新政権の政策の不確実性など、これまでのグローバル化の潮流とは異なる流れがありました。加速する流れの中、我々は少しでも気を緩めると瞬時に取り残されてしまうことを常に意識し、変化を厭わずに、これまで以上にスピード感を持って一つひとつの施策に着実に取り組んでまいります。
このCSR報告書は、DOWAグループの取り組みを社外のあらゆるステークホルダーの方々に広くお知らせするとともに、従業員一人ひとりが自分たちの活動を見つめ直し、新たな価値を生み出すきっかけとなることを目的としています。さまざまな社会課題と向き合い、課題解決に貢献する企業として進歩し続けるために、忌憚のないご意見をお聞かせください。