DOWAグループでは、事業のライフサイクルの各段階で必要な資源やエネルギーの投入(INPUT)と、その活動から発生するCO2や廃棄物(OUTPUT)の収支を定量的に把握して、マテリアルバランスを考えながら事業活動を進めています。
2015年度より、DOWAサーモエンジニアリング浜松北工場、インドネシアのPT.DOWA THERMOTECH INDONESIAの2社が加わったことから、前年度に比べ環境負荷が増加しましたが、全体の傾向は大きく変わっていません。
項目の詳細については、地球温暖化対策への取り組みをご覧ください。
DOWAグループの資源循環には、大きく3つのループがあります。
1つ目は、自社内発生・自社利用で、当社の製錬や金属加工などの「製造事業」で発生した廃棄物を「環境事業」でリサイクルし、販売や当社の原料として再利用を行っています。
2つ目は、他社の製造工場の工程から発生する金属くずなどを受け入れて行うリサイクルです。当社の素材や部品を納める顧客工場からの場合は、受け入れた廃棄物を原料として再び活かすなど、新たな資源投入量の削減にも繋がっています。
3つ目は、使用済みの最終製品のリサイクルです。家電リサイクルや自動車リサイクル、小型家電リサイクルなどを通じ、社会から幅広く回収された使用済み製品は、金属素材として再び社会に還元されます。
DOWAグループでは、このように自社の生産段階から社会から発生する廃棄物まで3つのループを通じて、限りある資源の有効活用に取り組んでいます。同時に資源循環における社会的責任として、適切な水処理、廃棄物の無害化、確実な最終処分など、リサイクルのあらゆる段階で環境負荷の最小化に努めるとともに、処理工程で発生する熱を蒸気や電力として活用するなど、環境保全と省エネルギーに配慮した持続可能な資源循環を目指しています。
DOWAグループでは、環境保全への取り組みを企業経営における重要な課題と位置付け、「環境基本方針」を制定し、この方針を基本的な考え方として、グループ全体で環境経営を推進しています。
〈 環境基本方針Web 〉http://www.dowa-csr.jp/about/csr_policy.html
DOWAグループの環境管理活動は、CSR部門と環境保全活動を行う各事業会社の企画室が連携して行っています。
DOWAホールディングスは各事業会社間の調整・取りまとめを行うとともに、DOWAグループ全体の環境管理・コンプライアンス管理を行っています。また、主な国内生産拠点および海外事業所ではISO14001を取得しており、環境管理の適切な実施のために定期的な内部監査・外部監査の実施と、監査員育成講習を通じた内部監査員の育成支援に取り組んでいます。
事業所 | 教育・講習内容の一例 | |
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グローバル | NIPPON PGM AMERICA, INC. | 環境事例研究 |
蘇州同和資源綜合利用有限公司 | ISO14001導入内部集合研修 | |
ISO14001内部審査員育成 | ||
化学品漏洩緊急事態対応演習訓練 | ||
BPEC(Bangpoo Environmental Complex Co.,Ltd) | ISO 9001, 14001 | |
ESBEC (Eastern Seaboard Environmental Complex Co.,Ltd) |
Safty folklift driving | |
Industrial waste management supervISOr | ||
Transition ISO14001:2015 | ||
TEC(Technochem Environmental Complex Pte Ltd.) | Internal Environmental Mgt Audit course (ISO14001) | |
PPLi(PT Prasadha Pamunah Limbah Industri) | Training Manifest Distribution | |
Spill Handling | ||
Environmental aspect for every activities | ||
DOWA Thermotech(Thailand) Co., Ltd. | Energy saving | |
Fire fighting | ||
Safety on using chemical | ||
DOWA Metaltech(Thailand) Co., Ltd. | 廃棄物処理システム講習 | |
大気処理システム講習 | ||
排水処理システム講習 | ||
HIGHTEMP Bangalore | Refresher training on ISO 14001 | |
HIGHTEMP Bangalore-Nelamangara | Waste Hadling Management | |
Recsyling of Materials | ||
Work Place Clean and waste cegregation | ||
HIGHTEMP Pune | ISO 14001 | |
PT.DOWA THERMOTECH INDONESIA | Heat treatment | |
Training First Aid | ||
Training CPR (Pacemaker) | ||
DOWA エコシステム |
エコシステム山陽 | 公害防止管理者講習 |
エコシステム秋田 | 内部監査員講習 | |
エコシステム千葉 | 環境目的・目標学習 | |
エコリサイクル | EMS教育 | |
エコシステムジャパン | EMS教育 | |
イー・アンド・イー ソリューションズ | フィールド環境学習(太陽光発電所見学会) | |
エコシステムリサイクリング 東日本 | 環境ISO勉強会 | |
アクトビーリサイクリング | ISO内部監査員研修コース | |
エコシステム岡山 | 産廃処理に関する講習 | |
グリーンフィル小坂 | EMS環境側面の洗い出し | |
エコシステム小坂 | 保安懇談会 | |
エコシステムリサイクリング 北日本 | ISO14001内部環境監査委員講習 | |
特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者講習 | ||
特別産業廃棄物管理責任者 | ||
メルテック | ISO一般教育 | |
DOWA メタルマイン |
秋田ジンクソリューションズ | ISO14001講習 |
小坂製錬 | ISO14001内部監査員講習 | |
EMS教育 | ||
ISO14001移行対応コース | ||
秋田ジンクリサイクリング | 国家試験ほか(危険物/公害防止管理者など) | |
DOWA エレクトロ ニクス |
DOWAエレクトロニクス岡山 | ISO14001システム教育 |
ISO14001内部監査員再講習 | ||
DOWAセミコンダクター秋田 | 特化物技能講習 | |
有機溶剤技能講習 | ||
危険物講習会 | ||
DOWA IPクリエイション | ISO14001自覚教育 | |
省エネ法 提出書類の書き方と管理標準の理解と作成 | ||
公害防止管理者リフレッシュ研修 | ||
DOWAエフテック | EMSブラッシュアップ教育 | |
DOWA メタルテック |
DOWAパワーデバイス | 排水処理施設停止訓練 |
DOWAハイテック | 公害防止リフレッシュ研修 | |
公害防止フォローアップセミナー | ||
化学物質対策セミナー |
||
新日本ブラス | ISO14001内部監査員研修 | |
ISO9001内部監査員研修 | ||
DOWAメタニクス | 環境ISO一般教育 | |
環境ISO特別教育(酸廃水処理施設点検) | ||
DOWA サーモテック |
DOWAサーモエンジニアリング 滋賀工場 | 環境担当者研修会 |
DOWAサーモエンジニアリング 半田工場 | 特別粉じん教育 | |
セム | 環境に関する教育 | |
産業廃棄物教育 | ||
近隣への配慮に関する教育 | ||
DOWAサーモエンジニアリング 太田工場 | 粉じん特別教育 | |
公害防止講習(水質2種) | ||
DOWA ホール ディングス |
卯根倉鉱業 西部事業所 | 鉱害防止技術基礎研修 |
卯根倉鉱業 北部事業所 | 休廃止鉱山資格認定講習 |
DOWAグループでは、有害物質の低減、環境保全、製品の高効率化や長寿命化につながる金属素材、半導体、磁性体などの材料やサービスの提供を通じて、持続可能な社会の構築に貢献しています。
ポリ塩化ビフェニル(PCB)は絶縁性、不燃性などの性質によって、トランス・コンデンサといった電気機器をはじめ幅広い用途に使用されていましたが、1968年のカネミ油症事件を契機として毒性や環境汚染が社会問題化し、1972年に製造が中止されました。2001年にPCB特措法が施行され、確実かつ適正な処理を推進することが定められたものの、2002年にPCBを使用していないはずの電気機器の絶縁油に微量のPCBが含まれていることが判明しました。この非意図的な混入により汚染された微量PCB廃棄物とPCB濃度が0.5~5,000mg/kgの廃棄物とを合せて、低濃度PCB廃棄物と呼ばれています。この微量のPCBに汚染された廃電気機器等については、その量が膨大かつ未だ全量把握がされていないことから、2027年3月を法定期限とする処理完了に向けて処理体制の強化が急がれています。
低濃度PCB廃棄物無害化処理施設
(エコシステム秋田)
DOWAグループでは、2005年から環境省による微量PCB汚染廃電気機器等の焼却実証試験へ複数の事業所で参画し、2010年に福岡県、2011年に岡山県と秋田県で廃電気機器等を中心に処理を開始しています。2015年度は、新たに秋田県において低濃度PCB廃棄物専用焼却炉を設置し、廃電気機器等の処理に係る大臣認定を取得しました。
当社は、処理だけでなく大型電気機器の現地での解体作業や運搬等も実施しており、さらにDOWAグループ全体で処理能力を年間約3万トンから約5万トンに拡大したことで、低濃度PCB廃棄物の処理促進に貢献しています。
DOWAグループでは、自社保有森林の管理や植樹などを中心に、自然保護と地域貢献を取り組みの柱としてきましたが、生物多様性基本方針の策定により、さらに自社事業と生物多様性の関係性と影響の把握に向けた取り組みを進めています。
生物多様性基本方針 | 私たちDOWAグループは、自らの事業活動が生物多様性が生み出す自然の恩恵を受けており、その恵みを持続的に享受するには生物多様性の保全が重要であることを認識し、社会の一員として生物多様性の保全と持続可能な利用に自発的かつ継続的に取り組みます。 | |
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行動指針 | 1.事業による影響の把握と取り組みの実施 |
私たちは、事業活動がどのような生態系サービス※に依存し、どのような影響を与えるかを把握・分析し、影響の回避ならびに低減に努めます。 ※生態系サービス:私たち人間が生態系から得る便益(国連ミレニアム生態系評価における定義) |
2.従業員の認識 |
私たちは、生物多様性に関する従業員の教育および意識向上に努めます。 | |
3.資源循環型の経営 |
私たちは、省資源、省エネルギー、3R等の活動を通じて、資源循環型の社会風土の形成に努め、総合的な取り組みを通じて生物多様性の保全を目指します。 | |
4.多様なステークホルダーとの連携 |
私たちは、事業に関係する多様なステークホルダーとのコミュニケーションを通じて情報の共有に努め、生物多様性の持続可能な利用を図ります。 |
2015年度は、引き続き行動計画策定に向けて、事業所内や近隣地域の生物保全地域、水源地などの確認、各事業所における緑化や自然保護活動の状況などについて調査を行いました。また、鉱山跡地(秋田県小坂町)への植樹活動、CSR調達を通じたサプライヤーへの生物多様性配慮の推進などの活動も継続して実施しています。
DOWAグループの製錬事業では、中期計画で目標とする亜鉛自山鉱比率50%超に向け鉱山探鉱・開発案件を推進しています。DOWAグループでは探鉱段階から継続的な環境モニタリングを行い、開発・操業において環境への負荷を最小限に抑える対策を講じることで、持続可能な開発と地域社会との調和を目指しています。
生態系モニタリング
(米国・アラスカ州探鉱案件)
水系モニタリング
(メキシコ・チワワ州開発案件)
ティサパ鉱山での植樹活動
(メキシコ・メキシコ州)
DOWAグループでは、日本経団連および日本鉱業協会の低炭素社会実行計画(2013年1月公表)に基づき、「2020年度におけるCO2排出原単位を1990年度比で15%削減する」という目標を掲げ取り組んでいます。
2015年度のDOWAグループ全体での温室効果ガス排出量は、約1,669千t-CO2(国内1,577千t-CO2、海外92千t-CO2)で、グループ全体の温室効果ガス排出量は約4%の減少となりました。
〈 電力起源 〉
〈 化石燃料起源 〉
DOWAグループのCO2排出量は、外部から受け入れる廃棄物の焼却処理に起因するCO2の排出が大きいことが特徴です。受け入れる廃棄物から発生するCO2排出については、取扱量のコントロールによる削減が困難であることから、廃棄物焼却熱を使った発電や蒸気利用などのサーマルリサイクルを進め、有効利用を図っています。
省エネルギーや燃料転換などの温暖化対策に加え、環境負荷の少ない自然エネルギー等の活用に取り組んでいます。
DOWAグループは現在、秋田県に6か所の水力発電所を所有しており、2015年度の発電量は前年度に比べ約2%減の62.1GWhでした。自然エネルギーを活用する水力発電は、当社の製錬事業のエネルギーを賄う重要な電力源となっています。
廃棄物発電は、ごみを焼却する際の「熱」で高温高圧の蒸気を作り、タービンを回して発電します。現在、国内4か所、海外1か所の5事業所で発電を行っており、2015年度に利用した廃熱発電量は、前年度に比べ約4%減の76.7GWhでした。
太陽光発電は、天気によって発電量が左右されますが、発電量を目に見える形で示すことができるなど、従業員の省エネ意識の向上や地球温暖化・エネルギー問題などの環境啓発にも役立っています。
現在国内の5事業所で太陽光発電システムを導入しており、2015年度は約332MWhの発電を行い、CO2排出削減に貢献しています。
※CO2排出量については、原則として、系統電力購入量、化石燃料消費量、および受入廃棄物量に対して地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)における排出係数を乗じて求めています。受入廃棄物由来のCO2排出量に関しては、この報告書の作成に当たり算定条件を設定しているため、行政への報告値と必ずしも一致しない場合があります。また、日本と海外の廃棄物の分類が異なることと、海外事業所の受入廃棄物に対し適切な排出係数を設定するのが困難であることにより、廃棄物起源のCO2排出量については国内事業所分のみ表示しています。
DOWAグループでは、地域別の水リスクについて考慮しながら節水や水のリサイクルに取り組んでいます。
DOWAグループで使用する水資源の約8割は、金属製錬の工程等で冷却水として利用する海水です。淡水については、水資源の有効利用のため工程内での節水やリサイクルに取り組んでいます。2015年度の水資源投入量は92.5百万.で、主に増産に伴う冷却水が増えたことにより前年度比3%増加しました。このうち淡水の使用量は前年度とほぼ同レベルの14.4百万.でした。
2015年度の排水量は105百万m2で、前年度比1%減でほぼ同レベ ルでした。
[ 水資源使用量 ]
DOWAグループでは、天然資源の消費を抑制するとともに、使用済み資源の循環的利用を進めることにより、持続可能な社会形成への貢献を図っています。
2015年度の原料の使用量は1,026千トンで、増産に伴い前年度より約5%増加しました。
2015年度の受入廃棄物量は1,186千トンで、前年度とほぼ同じレベルでした。
2015年度の製品量は629千トンで、前年度に比べ約9%増加しました。これは主に製錬事業における亜鉛生産量の増加によるものです。
2015年度の廃棄物処理量は486千トンで、前年度に比べ約4%減少しました。
2015年度のリサイクル量は744千トンで、前年度に比べ約5%減少しました。このうちDOWAグループ内でのリサイクルが221千トン、社外でのリサイクルが523千トンでした。
岡山県のバイオディーゼル岡山では、2008年より岡山市と共同で、一般家庭、飲食店、食品製造工場などから排出される廃食用油を回収し、年間500kl以上のバイオディーゼル燃料(BDF)を製造しています。製造したBDFは、主に岡山市のごみ収集車に使用する軽油の代替燃料として利用されるほか、市内の民間路線バス、DOWA事業所内のフォークリフトなどの車両に活用されています。BDFの製造では、排水の発生しないシステムを採用して環境に配慮しているほか、日々の検査に加え年4回外部機関での評価も行うなど品質管理を徹底しています。また、軽油の代替燃料として廃食用油を有効活用することでCO2の排出を低減し、地球温暖化の防止にも貢献します。
2015年度は、これまでの高品質なBDFの製造と小学生等の工場見学受け入れなどの環境教育の取り組みが評価され、3R優良企業として、環境省「平成27年度循環型社会形成推進功労者環境大臣表彰」を受賞しました。