特集2 豊かな森と生物を育む
02 水を浄化し、生き物を育む…
ビオパレットに飛来したカルガモ(下)
湿地や水辺の植物群は、高い水質浄化能力を持つことが広く知られています。
埼玉県本庄市のDOWAハイテック社内では、これら植物群や水生生物、昆虫、微生物などの生息場所を人工的に作り出し、自然の浄化能力を応用して水質浄化を行う環境に優しい排水処理施設を設置しています。この排水浄化施設は、植栽された植物が四季折々の花を咲かせ、彩りが絵の具のパレットのようになってほしいという思いを込めて、「ビオパレット(ビオ(生物の意味のBio)+パレット)」と名づけられています。排水がビオパレットを通過することにより、水の汚染指標であるBOD濃度は10〜20mg/Lから3mg/L未満に低下し、有機汚濁物質が大幅に除去されます。また、このビオパレットには、トンボやメダカなど様々な水辺の生き物のほか、植物の葉や花にも昆虫が集まり、様々な生物を育む場所にもなっています。
これまで埼玉県知事や小学生など、大勢の方々が見学され、生物を用いた浄化技術への関心の高さを実感しています。ビオパレットは自然環境を乱さず、処理コストも安価であることから、国内のみならず、海外でも排水の最終処理技術としての普及促進を図っていく計画です。
ビオパレットの処理は、自然(植物、生物)の浄化能力に依存するため、その能力を最大限に発揮し安定化させるための技術の構築に取り組んできました。現在では、ハイテック以外にもフィールド を広げて活動しています。
熱心に見学されるお客様や、動植物に触れ合い喜ぶ子供たちを見ていると、さらなるビオパレットの普及に努めていきたいと思います。
DOWAハイテック 笠松 寿規
Column コラム
鉱山開発における生物多様性保全に向けた取り組み
非鉄金属は、私たちの便利で豊かな社会活動を支えていますが、鉱山の開発に際しては山を切り開き、多くの土石を発生させるなどの環境負荷側面も有しています。特に、鉱山が生物多様性の高い自然生態系地域に多いことから、より環境に優しい開発が望まれています。また、限りある資源を有効に使うためにも、金属リサイクルを進めていかなくてはなりません。
DOWAグループでは、製錬原料として廃家電などのリサイクル原料の活用を積極的に進めていますが、自然の鉱石の果たす役割も重要なものとなっています。
DOWAグループがメキシコで共同開発しているティサパ鉱山(亜鉛鉱山)では、鉱山開発地域における植林による植生の回復や、周辺地域の自然環境の保全など、生態系に配慮した開発を行っています。特にティサパ鉱山周辺で生育する貴重種のクーパーハイタカ(学名:Accipiter cooperii)については、餌となる小動物の営巣地の設置、狩猟等の禁止と保護を促進するための立て札などの整備、定期的な巡回などを行い、保護に努めています。