DOWAグループは、事業活動が環境に及ぼす影響を認識し、本業を通じた環境・社会への取り組みと、自社事業における環境負荷の低減を経営における重要な課題と位置付け、グループ全体で取り組みを進めています。
かつて日本では多くの鉱山が操業していましたが、1970年頃から、急速に円高が進んだことなどにより採算性が悪化し、多くの国内鉱山が操業停止を余儀なくされました。現在、それらは休廃止鉱山として付帯施設である鉱さいダムとともに、鉱山保安法など鉱山諸法・制度のもと、最終的に鉱山を操業する権利を保有していた企業または地方自治体により厳重に管理されています。
当社も現在、20か所以上の休廃止鉱山と30か所以上の鉱さいダムを運営・管理しており、その大部分は休止または廃止の状態です。また、鉱山諸法・制度よりも厳格な自主管理基準を用いた管理を行うことにより、鉱害防止や安全性の維持・向上に努めています。
休廃止鉱山では、坑道を開削したことで、坑内に残った鉱石の一部が地下水や空気中の酸素と触れて酸化反応を起こし、酸性水や重金属を含む坑内水(坑水)が坑口から流出する可能性があります。また、鉱さいダムでは、雨水や地下水などにより有害重金属などが含まれる滲出水(廃水)が流出し、河川に流れ込み、水質や農用地の汚染を引き起こすおそれがあります。
当社は坑廃水処理場を各施設の近隣に設置し、坑道や鉱さいダムなどから発生する坑水および廃水を24時間365日監視し、その性状に応じて適切な処理を行っています。これにより、健全な水循環と持続可能な水利用環境の維持に取り組んでいます。
当社が管理する休廃止鉱山および鉱さいダムの大半が1980年までに操業を中止した施設です。坑廃水処理場や鉱さいダムの施設は、公的機関である各地の産業保安監督部によって不定期な検査が行われますが、当社の鉱さいダムはほぼ休止中または廃止済みの状態にあり、覆土および鉱害防止工事の実施、植生による緑化までが完了した、非常に安定的な状態にあります。当社は使用中の鉱さいダムを含めて個所別の点検項目と頻度を定め、有資格者が閉塞済みの坑口や鉱さいダムの法面や暗渠などを巡回点検することにより、経時変化などによる劣化個所を早期に発見しその修復を行うことで、安定的な状態を維持できるよう努めています。
近年、日本においては、局地的な豪雨がこれまでにない頻度で発生するなど、気候変動に伴う異常気象が続いています。また、日本は地震が発生しやすい国であり、大規模地震への備えは必要不可欠です。
当社では、豪雨が発生しても系外に坑廃水が流出しない仕組みを構築するとともに、大規模地震に対する鉱さいダムの安定性評価や必要に応じた補強工事を計画的に実施することにより、自然災害の脅威への備えを拡充しています。
DOWAグループの休廃止鉱山の管理と坑廃水処理を行っている卯根倉鉱業では、処理設備の省力化や鉄酸化バクテリアを用いた中和法など、坑廃水処理プロセスにさまざまな技術を導入しています。
これからも、低環境負荷・低コストを両立する効率的な処理方法を追求し、安全で安心な鉱害防止事業に努めて行きます。