秋田市臨海部に位置する秋田製錬は、200名以上の従業員が働く国内最大の亜鉛製錬所です。亜鉛は自動車、建築材料などの防食用めっきや、船舶・橋梁などの耐食用部品として、産業と暮らしを支える重要な素材です。秋田製錬は年間約20万トンの亜鉛を生産する国内トップシェアの製錬所であり、またヘマタイト法などに代表される独自技術によって、世界トップレベルの品質を実現しています。
秋田製錬では、人材戦略によって生産基盤をより強固なものにするため、「採用」「育成」「定着」の3つがうまく機能することを目指し取り組みを進めています。秋田県は全国最大のペースで人口減少が進んでいる地域であり、低下する出生率や高齢化、雇用の流動性の高まりなど、労働人口の減少に対応していく必要があります。人材の確保には採用者を増やすだけでなく、従業員を育成し、定着させ、さらなる採用へと繋げていくことが重要です。このためにミスマッチを防ぐような採用活動、働きやすい労働環境の整備に加え、各々がやりがい・働きがいを高め能力が発揮できるような人材育成に取り組んでいます。
秋田製錬が掲げる「はたらく人の活きがいを追求し、環境にやさしい“ものづくり”で社会に貢献する」は、2018年に社内の「現場力向上プロジェクトチーム」によって策定された新しい企業理念です。現場力向上プロジェクトは、企業の成長基盤の構築に欠かせない現場の力を人材育成の視点から向上させることを目的として、DOWAグループ全体で進めている取り組みです。秋田製錬のプロジェクトでは企業理念が人材育成の根幹になるものと考え、「会社は何のためにあるのか」を起点に、モノづくりは人づくりという創業以来の精神に立ち返り、目指す姿としてまとめました。現在は社内全員が共有すべき理念として浸透に努めています。
秋田製錬の現場力向上プロジェクトチームは、全社員からのアンケートで選ばれた各部門のメンバーで構成されており、特に自発的な行動変化を促す人材マネジメントに力を注いでいます。現在は、「人は自ら成長する力を持っている」という考えのもと、指導中心の人材育成から、気づきと自らの成長を促すための支援や促進といった関わり方を取り入れた活動へと展開させています。今後は、目指す姿を共有する人材が、それぞれ自律自走の取り組みで活躍できるような環境づくりを推進していきます。
2015年度、秋田製錬は若者の採用・育成に積極的で雇用管理の状況等が優秀な企業を
厚生労働大臣が認定する「ユースエール」企業に県内で初めて認められ、以来5年間継続して認定を受けています。また、2017年度には、厚生労働省が従業員のキャリア形成支援のモデルとなる企業を表彰する「グッドキャリア企業アワード」の人材開発統括官表彰を受賞しました。さらに、脱少子化モデル企業を表彰する「ベビーウェーブアクション会長表彰」、「秋田市元気な子どものまちづくり企業認定」、「子育て応援リーダー宣言~秋田市版イクボス宣言~」など、仕事と子育ての両立支援でも高い評価を受けています。
外部評価を得ることは、外から働きやすい会社だと認識してもらえるだけでなく、第三者の目を通して認められることで、従業員が自分の職場を誇らしく思うきっかけや自社の働きやすさの再認識に繋がる効果があります。また受賞によって、低い離職率や有給休暇の取得率の高さなど評価されるポイントが明確になるため、取り組みの強化や深化にも役立っています。
秋田製錬は、社内・社外の視点を活かしたさまざまな取り組みを通して、ものづくりの源を支える「人」を中心とした事業基盤づくりを進めていきます。
人口減少は国や地域経済にとっても、企業としてもマイナス面で捉えることが多いですが、当社が変わる強いきっかけとなりました。以前は生産量や売上等の経済指標が主な管理指標でしたが、それに加えて人を育て定着させるための物差しとして、従業員満足度調査を実施し、やりがい・働きがいなどを定量的に評価し、より具体的に対応策・改善策が検討できるようになりました。私たちは働く人の活きがいは、お客様の信頼と満足に繋がる良い“ものづくり”の源泉であると信じています。満足度はまだまだですが、互いの価値観を尊重し合い、一人ひとりが考え行動することで心の豊かさと企業価値の向上を追い求めていきたいと思います。