DOWAグループは、社会から信頼される企業であり続けるために、コーポレート・ガバナンスの強化を重要な経営課題の一つと位置付け、「DOWAグループの価値観と行動規範」に基づき、取り組んでいます。
近年、世界の紛争地域で採掘される鉱石が、武装勢力の資金となって内戦等を長引かせ、労働者や地域住民に大きな人権侵害を引き起こしていると指摘されています。2010年に成立した米国金融規制改革法では、武装勢力の資金源を断つことを狙い、米国株式市場に上場する企業に対し紛争地域であるコンゴ民主共和国(DRC)およびその隣接国原産の金、タンタル、すず、タングステンの4種類の鉱物の使用状況について、毎年情報開示を行うよう義務づけました。さらに、2017年には欧州議会が「紛争鉱物資源に関する規則案」を採択するなど、紛争鉱物を社会課題として捉え、企業に対応を促す取り組みが世界に広がっています。
DOWAグループは金属素材を扱う企業の社会的責任として、人権、環境、倫理などに配慮した責任ある鉱物調達に向け、取り組みを進めています。
金属を使用する製品は、自動車、電子機器、電化製品と膨大に存在し、世界中で流通することで、私たちの生活を支えています。情報開示の如何に関わらず、これらの製品原料である鉱石の調達が紛争を長引かせ、人権侵害を助長することはあってはならないと考えます。
当社では、2019年3月、紛争地域および高リスク地域における人権侵害などのリスクや不正に関わる組織の資金源となる恐れのある鉱物を原料として使用しないため、より具体的な管理方法を明確にすることを目的として、2012年に定めた紛争鉱物管理方針を「DOWAグループ責任ある鉱物調達方針」に改定しました。
この方針に基づき、金・すず(リサイクル原料に含まれるすずは除く)・銀を含む原料の全ての購入先についてデュー・ディリジェンス(リスク評価)を実施し、特定したリスクに対しては適切な対応を行います。リスク評価の結果、紛争鉱物に関する管理責任者が高リスクと判断した場合は原料購入の取引を停止することを定めています。デュー・ディリジェンスの実施に際しては、「OECD紛争地域および高リスク地域からの鉱物の責任あるサプライチェーンのためのデュー・ディリジェンスガイダンス」に従って取り組みを進めています。
また、方針の改定に伴い、当社のホームページに責任ある鉱物調達に関する専用の問い合わせ窓口を設けました。窓口を通じ、国内外のステークホルダーによる紛争鉱物に対する懸念やご意見に適時適切に対応することによって、サプライチェーン上のリスクに迅速に対処することができます。
DOWAグループは、日本国内に複数の製錬所を有しており、金や銀、すずなど多種類の金属を生産しています。これらの金属をあらゆるお客様に安心してご利用いただくために、責任ある鉱物管理の体制および実施状況に関して定期的に第三者機関による監査を受けています。
小坂製錬とエコシステムリサイクリングの2社はResponsible Minerals Initiative (RMI:責任ある鉱物イニシアチブ)により確立されたResponsible Minerals Assurance Processに準拠した紛争フリー製錬所プログラムの認証を取得し、紛争鉱物由来ではないことを第三者が証明した金およびすずを提供しています。プログラムでは、独立した第三者機関が製錬/精製業者の調達活動を評価し、取り扱うすべての鉱石が紛争と関わりのない鉱山、採掘場から採取されたものか、もしくはリサイクル材料かどうかを判断します。実際の監査では、当社の調達方針や行動規範、調達材料の分析プロセス、調達先の決定方法、そしてリサイクル材料の定義の適切性などについて、現地監査と文書確認を通じて検証を受けています。また、責任ある鉱物調達の推進の一環として、これらの事業所では、紛争鉱物や人権に関する従業員教育を定期的に実施しています。
2019年、さらに責任ある鉱物調達を推進するため、新たに銀についてLondon Bullion Market Association(LBMA:ロンドン地金市場協会)が定めたResponsible Silver Guidance(RSG)に準拠する第三者の認証を取得しました。管理システムや方針の強化、調達先のリスク評価手順の策定、監査結果の公表などを通じ、サプライチェーンの透明化を目指すステークホルダーの要請に積極的に対応しています。
私たちは、サプライチェーンの上流に位置する製錬事業者が果たすべき役割として、紛争や人権侵害に関連しない金属の供給体制を構築することで、責任ある鉱物調達に努めていきます。
紛争地域、人権侵害、資金洗浄、贈収賄など幅広いリスクが疑われるサプライヤーからの原料調達を防ぐために、2019年3月、DOWAメタルマインでは新たにマネジメントシステムを構築しました。
サプライヤーへのデュー・ディリジェンス(リスク評価)は、数百件ものサプライヤーへ質問状や通知書を送付し、回収していく気の遠くなる作業です。海外のサプライヤーは時差があり、メールでのコミュニケーションになりがちなため、回収に時間がかかることはもちろんのこと、初めは理解すらしていただけませんでしたが、責任ある鉱物調達の重要性や取り組みについて粘り強く説明したことで、サプライヤーの協力を得て認証までこぎつけることができました。サプライヤー様、関係者皆様のご協力に厚く御礼申し上げます。