特集I 環境・リサイクル事業でアジアの環境改善に貢献
Leader’s Voice
■ DOWAエコシステム
代表取締役社長 古賀義人
DOWAエコシステムは、日本国内のみならず、アジア各国での事業領域の拡大、事業拠点の拡大を推進し、アジアの環境改善に貢献していきます。
中国では、蘇州市での貴金属リサイクル事業に加え、家電リサイクル事業を始めます。また、天津市では第2の拠点として新しい合弁会社を設立し、家電リサイクル事業開始の準備を着々と進めています。この他、中国の華北・華南・内陸部エリアへも進出していき、蘇州でのビジネスモデルのような総合的金属リサイクル事業を展開していきたいと考えています。
東南アジアでは、グループの一員となった廃棄物処理会社MAEH社の各拠点のそれぞれの特性に合わせて、土壌浄化事業や金属リサイクル事業を展開していきたいと考えています。
アジア各国では、飛躍的な経済成長の中、依然として不法投棄や廃棄物の不適正処理によって引き起こされる環境破壊や生物・生態系への悪影響や健康被害などの問題を抱えています。我々DOWAエコシステムは、今まで培った技術とノウハウを活かし、アジアの環境改善に貢献していきたい。そのためにも、日本・中国・東南アジアのアジア圏域の国際循環ネットワークを構築できる人材の育成、各国間の人的交流が重要だと考えています。
〜 Returning the environment to the people of Asia 〜
アジアの経済発展と資源・環境問題
近年、アジアは、急速な経済成長と人口増加が進み、これまでの先進国の製造工場という立場を越え、大規模な潜在需要を持つ一大経済圏となりつつあります。
一方で、経済発展に伴う資源需要、廃棄物の増加が深刻かつ複雑な問題となっています。資源需要の増加は、価格の上昇や資源の寡占化・枯渇の恐れによって、リサイクルを推進することになりますが、回収、管理、そして処理に関する法などが十分に整備されていない状況にあります。
また、回収した廃棄物から効率よくかつ安全に有用物を取り出す技術やリスクを適正に管理する手法についても課題があります。
したがって、先進国から輸出された、あるいはアジアで製造された製品も、使用後に捨てられたり、金や銅など分離しやすい有価物だけを手作業で取って、残りはそのまま野積みにされたりすることもあります。このような廃棄物には鉛などの重金属が含まれている場合があり、適正に管理しなければ、健康被害や環境汚染を引き起こし大きな社会問題となる可能性がありますし、有用な資源も回収されないことになります。サプライチェーンの観点からも、アジア地域に進出している日本や諸外国の先進企業にとっても、廃棄物の適正処理/リサイクルは、喫緊の課題となっています。
アジアにおける展開
DOWAエコシステムは、リサイクル、廃棄物処理、土壌浄化を中核に、それらを有機的に結びつけるコンサルティングを提供し、トータルに環境リスクに対応する総合企業として幅広い環境事業に取り組んでいます。
2009年2月、東南アジア3カ国4拠点(シンガポール、タイ2カ所、インドネシア)で廃棄物処理事業を展開しているMAEH社(ModernAsia Environmental Holdings,Inc.)を買収しました。MAEH社の4拠点は、国際規格ISO9001・14001、US−EPA(米国環境保護庁)等の基準に適合しており、日本の処理施設と同等の高い技術によって維持管理を行っています。
また、中国では廃家電の適正処理を目的として制定された「廃棄電器電子製品回収処理管理条例」(家電リサイクル法)の2011年1月施行に合わせ、蘇州市の金属リサイクル工場で家電リサイクル設備を稼動、さらに天津市にも廃家電・廃電子機器リサイクル事業を目的とする新会社を設立することを決定しました。この他にも台湾に営業拠点を持ち、フィリピンでは温暖化対策として、メタン回収・破壊によるCDM事業を展開しています。
日本は、世界的にもトップレベルの優れた金属製錬技術や環境対応技術を持っていると同時に、整備された法体系による厳しい規制の中で企業活動を進めています。今後、アジアに資源循環ネットワークを構築し、この日本の環境技術や考えを現地の実情に合わせて普及させていくことは、効率の良い資源回収・リサイクルを可能にし、同時に環境汚染の防止に繋がると考えます。さらに、アジアの環境改善を進めることによって、気候変動対策や生物多様性といったグローバルな課題の解決にも貢献できると考えています。
DOWAエコシステムは、これまで日本国内で培った技術や実績をもとに、環境事業を広く海外に展開することにより、アジアにおける環境負荷の低減や環境リスクの適正管理に取り組んでいきます。
中国における総合リサイクル事業
中国の第11次五ヵ年計画で掲げられた「資源節約型で環境にやさしい社会の構築」に貢献し、中国がリサイクル大国に転換していくために、DOWAの「高いリサイクル技術」、「国際リサイクルネットワーク」、「安心、安全、信頼の適正処理に基づくサービス」を通じ、地球規模で環境負荷の少ない持続可能な社会の実現を目指します。
DOWAエコシステムは、2003年に中国江蘇省蘇州市に、日系企業としてはじめて環境・リサイクル会社『蘇州同和資源綜合利用有限公司(蘇州同和)』を設立し、湿式と乾式の2つの処理プロセスで金属リサイクル事業を進めてきました。主に江蘇省内の日系企業から出る金属くずを回収し、金や銀、白金族などの貴金属を再資源化しています。
蘇州同和では、日本の技術・基準による適正で透明な運営を行うとともに、プロセスには、ダイオキシン等の大気汚染対策設備や排水処理設備を導入しており、環境への負担を最小限にするように配慮しています。
また、廃家電の適正処理を目的として制定された「廃棄電器電子製品回収処理管理条例」(家電リサイクル法)が2011年1月1日より施行されます。これにより、年間約1億台といわれる廃家電の回収・解体処理の需要が生まれるといわれています。
また、蘇州市の総合リサイクル事業に次いで、2010年3月、住友商事(株)と、天津市緑天使再生資源回収利用有限公司と共同で中国・天津市において廃家電・廃電子機器リサイクル事業を目的とする新会社を設立することを決定しました。
近年の経済成長を受けて、中国では電機電子製品の普及とさらに高品位な製品への置き換えが急速に進むとともに、資源確保の観点からも廃家電の回収・処理需要が高まることが予想されます。
今後は中国全土での家電リサイクル事業展開や、その他のアジア地域での環境・リサイクル事業を積極的に進めていきます。
Voice
■ 蘇州同和資源綜合利用有限公司 劉克俊
2011年1月から、中国においても家電リサイクル法が本格的に施行されます。09年9月から、蘇州同和も廃家電のリサイクルを実施しており、TV基板、フロンなどの適正処理を自社の既存湿式・乾式工場にてできることが、最大の強みです。その強みを生かし、中国の循環型社会構築に貢献していきたいと考えます。
Voice 海外事業所の取組〜インドネシアのPPLi社より〜
PPLi社は首都ジャカルタの南方約50kmのボゴール県シレングシに位置し、1994年に設立された廃棄物処理会社です。国際基準に基づいた最終処理施設を擁し、集荷、輸送、保管、中間処理、そして最終処理に至るまで、厳格な管理の下で運営しています。
PPLi社 伊藤裕行
〜インドネシアの環境について〜
インドネシアは天然資源の豊かな国で、石油掘削や鉱山開発などが広く行われていますが、2009年に土壌汚染を含む環境改正法が発令され、インドネシア国内でも廃棄物の適正処理等が厳格に適用されるようになりました。これにより、日系企業や石油企業などからの土壌浄化・廃棄物処理の依頼が増加しています。
現政権は2014年までに所得の倍増と7.7%の経済成長率を目標として掲げています。また、車やオートバイ、パソコン、携帯電話などの普及状況を見ていると、今後はインドネシア国民の廃棄物の適正処理やリサイクルに関する意識も高まっていくと思われます。
私も、「環境修復をライフワークにしたい」という入社時の想いを忘れずに、好奇心旺盛な従業員達と共に、この国の環境づくりを担っていきたいと望んでいます。
〜CSRの取組について〜
当社は、創立以来、インドネシアにおける唯一の有害廃棄物の適正処理業者として、地域住民の理解と一体となった経営を心がけています。現在330名の従業員がいますが、多くは当社の理念に共感する有能なローカルスタッフであり、そのおよそ4割を地元のナンボ村から雇用しています。
また、スポーツ振興と地域の子供を対象とする、学校と連携した教育支援を重視した社会貢献活動を展開しています。
PPLi社の社会貢献活動の一例をご紹介します。
【環境保全】
環境意識の向上を目的として、地域の学校と連携した植樹活動を継続的に実施しています。
【教育】
次世代の教育支援を目的として、奨学金制度の設立、地元の工科大学と提携したインターンシップ学生の受け入れ、3ヶ所の小学校への教師派遣などを実施しています。
【ヘルスサービス】
クリニックの建設・運営、また子どもたちを対象とした医療衛生活動の支援などを展開しています。
【文化・宗教】
文化や宗教的な側面が地域の生活の上で非常に重要であることを認識し、地域の伝統行事およびモスクの建設等の宗教設備に対する寄付と支援を行っています。