当社は、環境リスクの最小化と経済性を両立できる高度な環境技術を背景として、社会問題化している廃棄物の処理や新たなリサイクルニーズへの対応に意欲的に取り組んでおります。昨年10月には岡山で国内初の連続式加熱炉を使用した微量PCB廃棄物の処理を開始しました。需要が拡大する太陽光パネル、希土類磁石、リチウムイオン電池のリサイクル技術の実用化など、研究開発にも力を入れております。
また、アジア各国において、廃棄物処理・金属リサイクル・土壌浄化という環境事業の三本柱を融合させ、循環型社会の構築にも貢献しております。特に近年は、著しい経済成長に伴い廃棄物発生量が飛躍的に増えているアジア地域での事業展開を積極的に進めております。今年4月にはシンガポールで貴金属回収・精製工場を本格稼動させました。今後もアジア全体をフィールドとして、国内外の拠点を有機的に組み合わせ、国境を越えた資源循環を推進してまいります。
資源循環技術の研鑽を重ね、グローバルな視点で環境問題を考え解決できる人材を育て、アジアNo.1と評される環境総合企業として、アジアの環境改善をリードする存在になることが当社の目標です。
エコシステム山陽株式会社
所在地:〒708-1523 岡山県久米郡美咲町吉ヶ原1125番地 従業員:101名(2012.3末)
西日本最大級の廃棄物焼却工場
エコシステム山陽(以下ESY)は、産業廃棄物の中間処理工場として、1977(昭和52)年にかつて硫化鉄鉱の採掘で東洋一と謳われた鉱山町「柵原」の地に設立されました。鉱山・製錬業で培った技術や、前身の岡山砿油、同和鉱業岡山クリーンワークス時代から30年以上にわたり受け継がれてきたノウハウを活かして、一般の廃棄物処理工場では処理が困難な廃棄物にも幅広く対応できるのが強みです。
ESYは三系列の焼却施設を有し、年間約20万トンと西日本最大級の処理能力を誇っています。高い技術力のみならず、75年に及ぶ柵原鉱山の経営を通じて培った地域からの厚い信頼が、これまでの発展に加え、微量PCB焼却処理施設の設置実現にも繋がりました。また、2012年2月には岡山県から優良産廃処理業者として認定をいただき、排出事業者の多種多様なニーズにお応えしながら、安全・安心な適正処理を行っています。
微量PCB焼却処理施設、稼動開始
PCB(ポリ塩化ビフェニル)は、絶縁性や不燃性など優れた性質を持つため、トランスやコンデンサをはじめ電気機器に幅広く使用されましたが、その毒性が社会問題化し、1975年に製造が中止されました。しかし、処理施設の設置が困難等の理由でPCB含有機器の処理はほとんど進まず、現在も多くの企業で保管されたままの状態です。事態打開のために制定されたPCB 特別措置法により、PCB保有事業者は2016年7月までの全量処理を義務付けられました。
ESYではこのPCB処理ニーズにお応えすべく、2011年10月より微量PCB(含有量:数mg~数十mg/kg)の連続焼却処理施設の稼動を開始しました。当施設は、微量PCB含有機器を筐体ごと炉に投入し、850℃で4時間以上加熱した後、気化したPCBを1,100℃かつ2秒以上で高温燃焼して無害化するプロセスが特徴です。連続式のトンネル炉により48トン/日という高い処理能力を実現し、国内に約120万台(推定)存在する微量PCB含有機器の処理に貢献しています。
焼却処理後の電気機器は、鉄や銅など多くの金属を含んでいるため、解体・分別し再利用されます。また、新設備の建屋屋上には太陽光パネルを設置し、運転電力の一部を賄うなど、環境にも配慮した最新設備となっています。
2009年4月に建設プロジェクトが発足し、2011年10月稼動を目標に準備を進めました。建設工期がタイトな中、東日本大震災の影響で資材調達が一時的に困難となり、施設完成の大幅遅延が懸念されましたが、関係者の努力が実って、予定どおり操業を開始することができました。本事業は廃棄物処理法に則った国内初の知事許可施設であることと、処理できる微量PCB廃棄物の幅が広いことが特徴です。多くのお客様のニーズにお応えできるよう、製販協力して、微量PCB廃棄物の処理体制の強化を進めていきます。
操業二課 課長 田山 武志
(2012.4~エコシステム秋田PJリーダー)
情報開示に努力
ESYでは、地域住民の方々からご信頼をいただくことが、事業継続の大前提であると認識しています。排ガスの品質や臭気に関して特に配慮した操業を実施しているほか、わかりやすい情報開示を心がけています。毎年、地域住民の方々をお招きしての工場見学会では、臭気クレームの件数や排ガス中のダイオキシン類などの化学物質の量をご説明しています。臭気に関しては、周辺地域の巡視を毎日欠かさずに行っているほか、通報専用のフリーダイヤルを設け、迅速に対応できる体制を整えています。
2011年度から稼動した新炉。その建設準備段階の地域住民説明会で、産業廃棄物処理工場が地域住民の方々にとっては迷惑施設でもあることを目の当たりにしました。皆様のご同意が無いと、新炉の設置申請書を提出できないため、ご理解を得るべく、会社として真摯な対応に努めました。地域との良好な関係の維持は、事業継続そのものに必要不可欠なので、今後も住民見学会の場で排ガス分析データを開示するなど、クリアでオープンな情報公開を行い、皆様にご安心いただけるような工夫を続けていきたいと思います。
管理課 毛利 加奈子
(2012.4~DOWAエコシステム ジオテック事業部)
中学生職場体験学習の受け入れ
2011年6月、地元・柵原中学校の職場体験学習の一環として4日間、4 名の生徒さんが職場体験学習を行いました。2006年度から継続している取り組みで、2011年度までに計6回、17名の生徒さんをお迎えしました。毎日の操業で実際に行われている分析業務を経験し、屋内外での実習を通して、働くことへの理解を深めていただきました。生徒さんにとって、普段あまり馴染みのない廃棄物処理工場ですが、実習を終えた生徒さんからは「自分の進路を考える上で、大変貴重な体験をした。」といった声をいただきました。