鉱山・製錬会社としてスタートしたDOWAグループは、1世紀以上にわたって技術力の研鑽を図り、資源調査・採掘からリサイクルまでを一貫して手がける独自のビジネスモデルを確立してきました。天然資源から有益な金属を取り出す「製錬事業」、取り出した金属に付加価値を加える「金属加工事業」や「熱処理事業」、こうして生まれた金属材料を高機能化する「電子材料事業」、使用後には無害化し、再利用可能なものは回収・再資源化する「環境・リサイクル事業」――
金属を中心に互いに結び付き合い循環する今日の事業展開は、経済発展や変化する社会環境の歴史の中で脈々と培ってきた技術が礎となっています。
DOWAグループの歩み
DOWAグループのルーツは、1884(明治17)年に創業者である藤田伝三郎が明治政府より払い下げを受けた小坂鉱山にあります。この地で採掘される「黒鉱」と呼ばれる鉱石には、金銀が豊富に含まれているものの不純物も多く、さまざまな元素が複雑に入り交じっているため製錬が困難とされていました。しかし何度も失敗を繰り返しながらも1902(明治35)年に「自溶製錬」と呼ばれる独自の製錬法を開発し、黒鉱からの金、銀、銅などの抽出・製錬に成功しました。この難しい課題を克服したことで、DOWAグループは金属元素の回収・製錬について世界でも有数の技術を得るに至りました。これらの製錬技術が基盤となり、現在の多彩な事業活動を支えています。
DOWAグループは、創業以来の鉱山・製錬事業で培った技術という財産を活かすとともに、
社会のニーズに柔軟に対応することによって、
金属を核とする独自の循環型ビジネスモデルを確立しています。
社会課題の解決に向けて
〈 資源枯渇と金属リサイクル 〉
金属資源の枯渇は今や世界共通の課題ですが、天然資源が少ない日本にとっては喫緊の課題です。特に貴金属やレアメタルは、日本を支える自動車や電機などの産業分野で欠かせません。
近年、電気・電子機器などの使用済み製品に含まれる貴金属やレアメタルなどを回収する取り組みが進められています。国内で1年間に使用済みとなる小型の電子機器類は約65万トンあり、これは2008年度の廃棄物の最終処分量(一般廃棄物と産業廃棄物の合計)の0.85%になります。これらの廃棄製品の回収・リサイクルは「天然資源の節約」につながるだけでなく、「鉱山開発に伴う環境負荷の低減」、廃棄物を減らすことによる「最終処分場の延命」など、多くの効果があると言われています。
〈 さまざまな課題と法制化 〉
金属リサイクルには、大前提として金属を効率的に回収する技術、その過程で発生する有害物や非有用物を安全かつ確実に処理する技術とインフラが必要です。また、効率的にリサイクル原料を集荷する社会システムの構築、多種多様な原料を解体・分別する手間やコスト負担など、解決すべき技術的・経済的な課題が山積しています。
このような状況を背景に、廃棄物の適正な処理及び資源の有効な利用の確保を図る観点から、2012年3月「使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律(案)」が閣議決定されました。
DOWAの取り組み
DOWAグループは資源循環型社会を担う企業として、鉱山・製錬から発展させてきた技術を金属リサイクルと環境保全に活かすよう、さまざまな取り組みを進めています。
●レアメタルを含む22元素のリサイクル
2011年、小坂製錬で新たにニッケルとスズの回収設備が稼働したことで、DOWAグループ全体で22種類の元素のリサイクルが可能になりました。液晶に使われるインジウムや半導体用途のガリウムなどのレアメタルをはじめ、太陽光パネルに使用される銀、自動車触媒用の白金などの貴金属に至るまで、回収した金属資源は製品を通じて再び社会へと循環しています。
○DOWAの回収する22元素と使用されている製品例
パソコン、携帯電話、ハイブリッドカー、太陽光パネルなど
●有害物の安全な処理
家電や電子機器の中には、地球温暖化やオゾン層破壊の原因となるフロンガス、鉛、砒素などの有害物質を含んでいるものもあり、不適切に廃棄されると環境汚染や健康被害につながるおそれがあります。
DOWAグループでは、鉛、砒素などは元来鉱石に含まれる元素のため、廃棄物からも安全かつ確実に回収することが可能です。また、鉱山時代に培った技術やインフラを活用した廃棄物の中間処理、最終処分も手がけているため、資源回収後の非有用物もDOWAグループ内で最後まできちんと処分・管理する体制が整っています。このほかにも家電リサイクル工場と廃棄物の焼却工場の連携で、冷蔵庫やエアコンなどから回収したフロンガスを適切に無害化処理する事業も行っています。
●海外展開
DOWAグループでは、インドネシアやタイにおける大規模な廃棄物処理事業、中国でも複数のリサイクル事業拠点を有するなど、国内他社に先駆けて海外でも環境・リサイクル事業を展開しています。資源循環と環境負荷低減が世界共通の社会課題となるなかで、日本のハイレベルの環境技術を海外すなわち地球規模で活かしていくことは、まさにDOWAグループの企業理念「地球を舞台とした事業活動を通じ、豊かな暮らしの創造と資源循環社会の構築に貢献する」そのものであり、今後も一層積極的に推進してまいります。