社会における経済的側面の状況
DOWAグループでは、資源のリサイクルや、廃棄物を適正処理することによる無害化・安定化、フロンや代替フロン類の破壊処理などの環境・リサイクル事業を行っています。
これらの活動が社会や環境に与えている効果については、外部経済効果(External Economical Benefit Evaluation=EEBE®)※1という考え方を使って評価しています。
廃棄物の処理による外部経済効果:270億円
2011年度に受入が増加した主な品目は、特管PCB汚染物(7千トン、新規)、特管廃アルカリ(前年度比4千トン増)、廃プラスチック類(同19千トン増)、燃えがら(同15千トン増)であり、前年度同様無害化による外部経済効果が減容化による効果より大きいという結果となりました。
効果 | 産業廃棄物 受入量 |
埋立最終 処分量 |
社会的コスト単位 | EEBE® |
---|---|---|---|---|
減容化 | 非特別管理 468千t/年 |
焼却灰 110千t/年 |
(管理型最終処理施設の単価) 15,000円/t |
(非特別管理産業廃棄物-焼却灰)× 管理型最終処理施設の単価 5,000百万円/年(前年比+25%) |
無害化 | 特別管理 150千t/年 |
ばいじん 40千t/年 |
(遮蔽型最終処理施設の単価) 200,000円/t |
(特別管理産業廃棄物-ばいじん)× 遮断型最終処理施設の単価 22,000百万円/年(前年比+10%) |
合計 | 27,000百万円/年(前年比+8%) |
※非特別管理産業廃棄物とばいじんの数量を見直し、前年度のEEBE® を訂正しています。
金属リサイクルによる外部経済効果:712億円
金属リサイクルによる外部経済効果については、回収された金属自体の価値(LME: ロンドン金属取引所価格に基づく国際相場価格)と、金属を含有するリサイクル原料使用を通じた廃棄物の減容による埋立処分場延命効果の両方を合わせて評価しました。2011年度の金属リサイクルでは、秋田ジンクリサイクリング稼働に伴い、約16千トンのリサイクル原料由来の亜鉛を回収しました。銅、鉛、亜鉛、パラジウムの回収量が増加しましたが、金以外の金属価格下落(3月末日時点の対前年度比較)により、外部経済効果は前年度より減少しました。
効果 | 金属リサイクル 原料使用量 |
埋立最終 処分量 |
社会的コスト単位 | EEBE® |
---|---|---|---|---|
減容化 | 149千t/年 | 1.5千t/年 | (管理型最終処理施設の単価) 15,000円/t |
(全リサイクル原料受入量- 埋立最終処分量)× 管理型最終処理施設の単価 2,200百万円/年 (前年比+29%) |
効果 |
回収量 | LME価格(2012.3.30時点) | EEBE® |
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金回収 | 5,600kg/年 | 4,400,000円/kg |
24,000百万円/年 (前年比+9%) |
銀回収 | 290,000kg/年 | 80,000円/kg | 23,000百万円/年 (前年比-34%) |
銅回収 | 8,500t/年 | 760,000円/t | 6,400百万円/年 (前年比-7%) |
鉛回収 | 23,000t/年 | 210,000円/t | 4,800百万円/年 (前年比-15%) |
亜鉛回収 | 16,100t/年 | 215,000円/t | 3,400百万円/年 (前年比+1,600%) |
パラジウム回収 | 1,300kg/年 | 1,700,000円/kg | 2,200百万円/年 (前年比-8%) |
インジウム回収 | 120,000kg/年 | 45,000円/kg | 5,400百万円/年 (前年比-54%) |
合計 | 48,000t/年 | 69,000百万円/年 (前年比-17%) |
※リサイクル素材の使用量を見直し、前年度のEEBE® を訂正しています。
フロン・代替フロンの破壊による外部経済効果:7.0億円
フロン・代替フロンの破壊によるオゾン層破壊の防止と温暖化防止の効果評価については、被害算定型環境影響評価手法LIME※2を用いて換算しました。カーエアコン用冷媒などに用いられる代替フロンHFC-134aの処理量が増加したことにより、外部経済効果は前年度より増加しました。
フロン・代替フロン破壊による効果 | EEBE® |
---|---|
地球温暖化への影響 オゾン層破壊への影響 |
350百万円/年 (前年比+13%) 354百万円/年 (前年比+14%) |
合計 | 704百万円/年 (前年比+14%) |
※1 EEBE®:四大監査法人、大手企業、大学教授らが参加して結成された中間法人『クラブ・エコファクチュア』で研究された、企業による環境活動を金額換算して評価するための数量的指標です。
※2 LIME(Life cycle Impact assessment Method based on Endpoint modeling):産業技術総合研究所などにより開発された、物質のライフサイクルを考慮した人間健康と社会資本への影響評価指標です。
※3 フロン・代替フロンの破壊に関するEEBE® については、LIME係数が設定されているフロン類を対象に、温暖化防止とオゾン層の破壊防止効果について算定しました。
※4 EEBE® の算定にあたっては、国内事業所の活動に由来するものを対象としています。
株式会社インターリスク総研 コンサルティング第一部 環境グループ
シニアマネージャー・上席コンサルタント 猪刈 正利
DOWAグループでは、2004年発行の環境報告書から、毎年外部経済効果EEBE® の算出結果を外部公表されており、今回が9年目になります。
本算出手法は、年々拡大・発展してきましたが、現在とほぼ同様の算出基準となった2006年度のEEBE® は814億円、以下同じく2007年度は889億円、2008年度は668億円、2009年度は940億円、2010年度は1,049億円、そして今回の2011年度は989億円となりました。今回、算出基準の多少の見直しがあったようですが、DOWAグループの外部経済効果EEBE®は増加傾向にあります。なお現在は、「廃棄物の処理」「金属リサイクル」
「フロン・代替フロンの破壊」とプロセス毎に大別されていますが、これを例えば「廃棄物の減容化・無害化(→公害防止効果)」「金属の回収(→資源リサイクル効果)」「地球温暖化・オゾン層破壊の防止効果」等の効果別に大別・分析することも考えられます。
さて、以上の結果をどのように評価するのかについてですが、例えば外部経済効果の拡大は企業収益にどのような影響を与えているのか、いないのか等の視点も重要と考えます。蓄積された過去のデータのさらなる分析を行い、今後もこの外部経済効果EEBE® をCSR経営の一つのツールとして活用されることを期待しています。